エトナ山

Mount Etna

  • イタリア
  • 登録年:2013年
  • 登録基準:自然遺産(viii)
  • 資産面積:19,237ha
  • バッファー・ゾーン:26,220ha
世界遺産「エトナ山」とカターニアの町
世界遺産「エトナ山」とカターニアの町
噴火する世界遺産「エトナ山」
噴火する世界遺産「エトナ山」

■世界遺産概要

エトナ山はシチリア島東部に位置する標高3,326m(2018年時点。推薦時3,335m)の活火山で、アルプス以南のイタリアでもっとも高く、地中海の島々の中でも最高峰となる。世界でもっとも活発な成層火山(ひとつの火口から噴火する円錐形の火山)のひとつで、2,700年の記録を持ち、もっともよく研究・監視されている火山でもある。

○資産の歴史と内容

シチリア島の火山活動は50万年以上前に開始された。アフリカ・プレートとユーラシア・プレートの接触面の摩擦熱や海水の融点降下の作用で岩石が溶け、そのマグマが吹き出すことで火山となった。エトナ山で噴火がはじまったのは10万年以上前で、57,000年前に起こった激しい噴火により標高3,600mほどの成層火山が形成された。15,000年前からふたたび活発化し、357もの溶岩流が流れておおよそ現在の形が完成した。

有史以来最大の爆発が紀元前122年の噴火で、麓の町カターニアに壊滅的な被害を与えた。近年では1669年の噴火が大きく、溶岩流でカターニア西部が壊滅し、海岸に1kmもの新しい土地を生み出し、1万人の犠牲者を出した。カターニアは世界遺産「ヴァル・ディ・ノートの後期バロック様式の町々[シチリア島南東部]」の構成資産のひとつだが、紀元前122年から現在までに122もの溶岩流を経験しているという。20世紀以降では1928年の噴火が大きく、麓の町マスカリが飲み込まれた。

21世紀に入っても1~2年おきに噴火しており、世界でもっとも活発な成層火山のひとつとされている。周辺には数十万人が住んでおり、登山やサイクリング、スキーに訪れる観光客も多いが、死者はほとんど出ていない。その理由は「ストロンボリ式」と呼ばれる噴火にあり、溶岩はサラサラとしていて粘性が低く、絶え間なく噴火しているためガスや圧力が溜まらず、突発的で爆発的な噴火を起こしにくいと考えられている。

シチリア島は南イタリアのギリシア人勢力圏マグナ・グラエキアの要衝だったことからエトナ山はさまざまなギリシア神話や記録に登場する。伝説によると、女神アテナが巨人エンケラドスを打ち破ってシチリア島の地下に封印したが、エンケラドスが暴れるたびに噴火するのだという。あるいは主神ゼウスが怪物テュポーンを破って封印した場所ともされる。また、風の神アイオロスや鍛冶の神ヘパイストスが活動する場所であり、奈落の神タルタロスが管理する地獄への入口があるともいわれる。

ギリシア人たちはエトナ山を古くから記録しており、歴史家トゥキディデスやディオドロス、詩人ピンダーらの作品に登場する。哲学者エンペドクレスは紀元前5世紀に山を訪れて研究を行い、火口で死亡したとされる(異説あり)。17世紀より科学的な研究がはじまり、19世紀には地質学者チャールズ・ライエルやザルトリウス・フォン・ヴァルタースハウゼン、カルロ・ゲメラーロ らによって体系的な研究が進められ、地質学や火山学・地球物理学などさまざまな分野で足跡を残した。

■構成資産

○エトナ山

■顕著な普遍的価値

本遺産は登録基準(vii)「類まれな自然美」、登録基準(ix)「生態学的・生物学的に重要な生態系」でも推薦されていた。しかし、IUCN(国際自然保護連合)は(vii)について同種の成層火山は数多く世界的なレベルではないとし、(ix)について生物多様性は認められるものの二次的なものであり資産のサイズも不十分で基準は満たされていないとした。

○登録基準(viii)=地球史的に重要な地質や地形

エトナ山は世界でもっとも活発で象徴的な火山のひとつであり、進行中の地質学的プロセスと火山地形の顕著な例である。この成層火山の特徴は山頂火口からの連続的な噴火と、側面の火口からの溶岩流を伴う頻繁な割れ目噴火である。この際立った火山活動は少なくとも2,700年にわたって記録されており、世界でもっとも長い歴史的記録を持つ火山活動となっている。山頂クレーターやスコリア丘(噴石丘)、溶岩流、溶岩洞、陥没地といった多様でアクセス可能な火山地形のためにエトナ山は研究と教育の最良の目的地となっている。エトナ山は今日、世界でもっともよく研究・監視されている火山のひとつであり、火山学や地球物理学およびその他の地球科学に影響を与えつづけており、世界的にきわめて重要な科学的・文化的・教育的価値を持っている。

■完全性

資産の境界は明確に定義されており、エトナ山のもっとも顕著な地質学的特徴を含んでいる。一帯にはほとんどインフラが存在せず、わずかな林道や山道、主要な林道に沿った基本的な山小屋、50以上の小さな地震監視施設と科学観測所がある程度である。

資産はエトナ山自然公園の一部を含んでおり、周囲をふたつの観光ゾーンを含む26,220haのバッファー・ゾーンが取り囲んでいる。これらの観光ゾーンにはホテルやハットといった宿泊施設や駐車場、レストラン、カフェ、空中ケーブル、スキー・リフト、インフォメーション・センター、ガイド・ツアーやハイキング、ウマやロバ・サファリ用のチケット・キオスクなどが含まれている。

■関連サイト

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