ジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸

Giant's Causeway and Causeway Coast

  • イギリス
  • 登録年:1986年、2016年軽微な変更
  • 登録基準:自然遺産(vii)(viii)
  • 資産面積:239.405ha
世界遺産「ジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸」の神秘的な景観
世界遺産「ジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸」の神秘的な景観
世界遺産「ジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸」の柱状節理
世界遺産「ジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸」の柱状節理

■世界遺産概要

ジャイアンツ・コーズウェーは北アイルランドのコーズウェー海岸、コーズウェー・ヘッドからベンベイン・ヘッドの間6kmに広がる奇観地帯で、「巨人の石道」を意味し、六角形の奇妙な石の柱が林立している。なお、本遺産は波の侵食に対応して2016年の軽微な変更で資産が若干拡大された。

○資産の歴史と内容

アイルランドに伝わるケルト神話によると、アイルランド島の巨人フィン・マックールがグレートブリテン島にいるスコットランドの巨人ベナンドナーと戦うためにアイリッシュ海に渡した石道(コーズウェー)の一部とされる。ベナンドナーがフィンより大きいことを知った妻ウーナは、フィンが寝ている間に揺りかごを用意して赤ん坊に変装させる。これを見たベナンドナーは父親の大きさを想像して恐れをなし、石道を粉々に破壊してスコットランドに逃げ帰ったという(フィンが戦って勝利する異説などもある)。

特筆すべきは六角形の断面を持つ無数の石の柱で、「柱状節理」と呼ばれる。こうした奇岩は新生代古第三紀、6,000万~5,000万年前の火山活動によるもので、流動性の高い溶岩が溶岩台地を形成し、急速に冷却されることで収縮して規則正しい割れ目を作り出し、玄武岩の柱ができあがった。主要な溶岩流が5~6回流れ込んだため、それらが階段状に層をなし、複雑な地形を描き出した。

石柱の断面の直径は約45cm、高さは最大12mで、その数は40,000本に及ぶ。形は六角形のものが多いが、四角形・五角形・七角形・八角形のものも見られる。石柱は風雨の侵食によってさまざまな造形を見せ、巨人のブーツ、巨人のハーブ、巨人の門、巨人の目、巨人のオルガン、蜂の巣、高い煙突、ハミルトンの座席といった数多くの名所がある。

こうした特異な地形に加えて海・海岸・断崖・草地・低木林・ヒース(荒れた低木帯や草原、あるいはそこに生える植物)・湿地が混在する美しい景観が広がっており、ハヤブサをはじめ80種の鳥類を中心に数多くの動植物を育んでいる。

アイルランド屈指の観光地で、少なくとも300年の観光の歴史を誇り、現在では北アイルランドの象徴とみなされている。

■構成資産

○ジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸

■顕著な普遍的価値

○登録基準(vii)=類まれな自然美

アントリム高原の端にある玄武岩層、特に柱状節理は重要な自然現象の表現であり、並外れた自然美を見せている。こうした岩石と周囲の崖や海が融合して特徴的な景観を生み出している。

○登録基準(viii)=地球史的に重要な地質や地形

新生代古第三紀における地球の活動の証拠であり、溶岩流と玄武岩層の重なりによって明確に示されている。玄武岩層は世界的に見ても最上級のものであり、柱状節理は傑出した特徴である。また、300年にわたるこの地の地質学的研究は地球史の解明に大きく貢献している。

■完全性

資産のほとんどはナショナル・トラスト(イギリスの歴史ある自然・文化保護団体)が所有しており、その管理下にある。また、国立自然保護区でもあり、法的保護を受けている。海岸は波による侵食を受けているため注意深く監視されており、2016年には侵食に対応するために資産を1.1%拡大した。

観光客の海岸へのアクセスは徒歩のみで、崖の上から海岸の景色を眺めたり、近づいて地質学的特徴を見学することができる。駐車場や道路・バス等は景観に影響を与えないよう配慮されており、安全性を確保するために監視されている。

■関連サイト

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