レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群

Pitons, cirques and remparts of Reunion Island

  • フランス
  • 登録年:2010年
  • 登録基準:自然遺産(vii)(x)
  • 資産面積:105,838ha
  • バッファー・ゾーン:11,729ha
  • IUCN保護地域:II=国立公園
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、火口はピトン・ド・ラ・フルネーズのクラテーレ・ドロミュー。遠くに見える山塊、左がグラン・ベナール、右がピトン・デ・ネージュ
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、火口はピトン・ド・ラ・フルネーズのクラテーレ・ドロミュー。遠くに見える山塊、左がグラン・ベナール、右がピトン・デ・ネージュ (C) Pouyot
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、グラン・ベナールから眺めたマファト・カールのダイナミックな景観
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、グラン・ベナールから眺めたマファト・カールのダイナミックな景観 (C) Mamphi
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、シラオス・カール。カールはもともとカルデラで、奥に見えるような岩壁=ランパールが一帯を取り囲んでいた
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、シラオス・カール。カールはもともとカルデラで、奥に見えるような岩壁=ランパールが一帯を取り囲んでいた (C) Ekrem Canli
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、ピトン・デ・ネージュ山塊の山腹に広がるベルーヴの森。中央下の滝はトロ・ド・フェール
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、ピトン・デ・ネージュ山塊の山腹に広がるベルーヴの森。中央下の滝はトロ・ド・フェール (C) Samuel Busson
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、ピトン・デ・ネージュ山塊の東に位置するタカマカ峡谷の絶景、左の大きな滝がタカマカ滝
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、ピトン・デ・ネージュ山塊の東に位置するタカマカ峡谷の絶景、左の大きな滝がタカマカ滝
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、ピトン・ド・ラ・フルネーズのカルデラであるエンクロ・フーケ。周辺を取り囲む岸壁がランパール
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、ピトン・ド・ラ・フルネーズのカルデラであるエンクロ・フーケ。周辺を取り囲む岸壁がランパール (C) Bascobug
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、ピトン・ド・ラ・フルネーズ山塊のランパール沿いを流れるランパール川
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、ピトン・ド・ラ・フルネーズ山塊のランパール沿いを流れるランパール川 (C) mwanasimba
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、溶岩流が固まってできたグラン・ブリュレの玄武岩大地
世界遺産「レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群」、溶岩流が固まってできたグラン・ブリュレの玄武岩大地 (C) Ekrem Canli

■世界遺産概要

レユニオン島はインド洋南西部、マダガスカル島の東約700km、モーリシャス島の南西約170kmに浮かぶマスカリン諸島の島で、フランスの海外領土となっている。火山活動によって生まれた海洋島(大陸と陸続きになったことのない島)で、峻険でダイナミックな火山地形が広がっており、特に峻峰=ピトン、圏谷(けんこく)=カール、岩壁=ランパールを特徴としている。こうした地形は熱帯雨林やサバナ(サバンナ。雨季と乾季を持つ半砂漠の熱帯草原)・温帯雨林・雲霧林・ヒース(荒れた低木帯や草原、あるいはそこに生える植物)といった多彩な森林や草原で覆われており、生物多様性ホットスポット「マダガスカル及びインド洋諸島」に含まれているように多彩な生物の生息地であるだけでなく、世界有数の固有種率を誇ると同時に、数多くの絶滅危惧種を育んでいる。

資産は南東のピトン・ド・ラ・フルネーズと北西のピトン・デ・ネージュという2つの火山峰を中心に島の約42%に及んでおり、レユニオン国立公園とおおよそ重なっている。

○資産の歴史と内容

マスカリン諸島はアフリカ・プレート(プレートは地表を覆う巨大な岩盤)から分裂しつつあるソマリア・プレート上に広がるマスカリン高原と呼ばれる海中高原から突き出した島々だ。高原の下にはマントルからマグマが湧き上がるレユニオン・ホットスポットがあり、6,500万年以上前から活動を続けている。数千万年は静かだったようだが、1,000万年ほど前に活動を再開し、800万年前までにマスカリン諸島のモーリシャス島とロドリゲス島を造山した。

ピトン・デ・ネージュは500万年ほど前に水深4,500mほどの海中で噴火を開始したと見られ、約210万年前に海面に出て島となった。火山活動を停止した約2万年前には標高4,000mを超えており、海底から8,000~9,000mに及ぶ巨大な山体を有していた。現在、その標高は3,071mまで縮小したが、それでもインド洋最高峰を誇る。

一方、53万年前までに活動を開始したのがピトン・ド・ラ・フルネーズで、20万~10万年前にピトン・デ・ネージュと一体化してレユニオン島を形成した。こちらはアメリカ・ハワイ諸島のキラウエア山(世界遺産)、イタリア・エオリア諸島のストロンボリ山(世界遺産)、イタリア・シチリア島のエトナ山(世界遺産)と並ぶ世界でもっとも活発な火山のひとつで、1640年から現在までに100回以上も噴火しており、標高は2,632mとなっている。

気候は位置的に海洋性で熱帯~亜熱帯に属すが、南東からの貿易風(1年を通して緯度30度付近から赤道に向かって東から西に吹き付ける定常的な偏東風)の影響を受けているため緯度の割に涼しく、海岸付近の夏の最高気温は30度、冬の最低気温は14度ほどとなっている。貿易風がもたらす湿潤な空気がピトン・ド・ラ・フルネーズで妨げられて雲を作るため、島の南東は年間を通して雨が非常に多く、年間降水量10,000mmを超えることもある(東京は約1,500mm)。一方、山頂から冷たく乾いた風が吹き下ろす島の北西は雨が少なく、年間降水量は500mmを下回る。気候的に、島の東の海岸沿いは熱帯モンスーン気候、島の内部は熱帯雨林気候、島の西はサバナ気候となっている。これらに加えて山頂付近は海岸から20度前後も気温が低く、冬には氷点下になって雪が降ることもある。こうした気候の多彩性が多様な植生を育んでいる。

レユニオン島の地形はこうした火山地形と気候の影響を大きく受けたものとなっている。ふたつの火山はいずれも楯状火山(粘性の低い玄武岩質の溶岩でできた盾を伏せたような緩やかな形状の火山)だが、風雨や河川による侵食や風化によって大きく変化した。象徴的な地形がピトン・デ・ネージュやグロ・モルヌ(標高3,019m)、グラン・ベナール(標高2,898m)といった峰々が連なるピトン・デ・ネージュ山塊の周辺に点在するカールで、特に北東のサラジー、北西のマファト、南のシラオスがその典型だ。一般的にカールは氷河が穴を穿ってできた凹地を意味するが、この地の圏谷は氷河地形ではなく、火口のカルデラ(火山活動で生まれた凹地)が空洞化したマグマ溜りの崩壊で沈下したり、風雨の侵食・風化、豪雨やサイクロンによる地滑りなどで崩壊して形成された凹地を示す。カールを取り囲む直線的あるいは曲線的な切り立った断崖がランパールで、その内部には非常に険しくダイナミックな地形が広がっている。その一方で、山塊の東にあったマルソワン・カールなどは侵食の結果、ほとんど埋め立てられている。

ピトン・デ・ネージュ山塊の頂部はヒースが広がる高山帯で、IUCN(国際自然保護連合)レッドリストの危機種(EN)であるレユニオンシロハラミズナギドリの重要な営巣地として知られる。一方、山腹にはベブールの森やベルーヴの森をはじめとする雲霧林が広がっており、数多くの川が現在も侵食を進めている。滝が美しいことでも知られ、特に山腹から深さ300mほどの地溝に流れ落ちる落差725mのトロ・ド・フェールはフランスでもっとも高く美しいと評価されている。また、ヴォワル・ド・ラ・マリエ(ブライダル・ベール滝)は結婚を反対する父親から逃げる途中で足を滑らせて滑落死した花嫁のベールが木々に引っ掛かって滝になったとの伝説が伝わるロマンティックな滝だ。

これに対し、より新しい火山峰であるピトン・ド・ラ・フルネーズの頂部はエンクロ・フーケ(フーケ・エンクロージャー)と呼ばれる東西13km・南北9kmほどの「U」形のカルデラが広がっており、西をベルコンブ、北をボワ・ブラン、南をトランブレという高さ100~400mのランパールで囲われている。内部には火口のクラテーレ・ドロミュー(クラテーレはクレーター/火口)やクラテーレ・ボリー、クラテーレ・コメルソン、火山円錐丘(熔岩や火山砕屑物が火口の周辺に円錐状に堆積したもの)のフォルミカ・レオやピトン・アユイといった火口群が点在し、ピトン・ド・クラック、ピトン・ユベール、ピトン・シスニー、ピトン・パルフェなどの火山峰がそびえている。エンクロ・フーケの東側は何度も溶岩が流れ出した斜面で、上層の急斜面はグラン・パント、沿岸部の緩斜面はグラン・ブリュレと呼ばれ、海岸線は海食崖(潮流や波による海食でできた断崖。波食崖)となっている。エンクロ・フーケはほぼ不毛地帯だが、東にかけて草原が広がり、さらにその周囲が森林となっている。グラン・パントやグラン・ブリュレの溶岩が流れ出したばかりの場所には最初に地衣類が定着し、シダから低木帯、森林へと成長する過程を見ることができる。

周辺のピトン・ド・ラ・フルネーズ山塊にはモーン・ランジュヴァン(標高2,380m)、ピトン・ド・パルタージュ(標高2,361m)、ピトン・ド・ベール(標高2,274m)、ピトン・テクストール(標高2,224m)といった峰があり、山塊の西には北から南に縦断するようにリヴィエール・ド・レスト、バザルト、サブル、クレトといったランパールが連なっている。その西端を流れるのがランパール川で、深い渓谷を穿っており、グラン・ガレやトゥル・ノワールをはじめ多くの滝や森を見ることができる。

レユニオン島は大陸と陸続きになったことがない海洋島であること、地形や気候の多彩性、3,000m超まで立ち上がる垂直構造に加え、近郊のマダガスカル島が現在の大陸とはつながりの薄いゴンドワナ大陸由来の島であり、こちらも独特の生態系を持つことなどが要因となり、固有種率が高く生物多様性に富むエリアとなっている。

レユニオン島の植生の1/3が森林で、生物多様性の主因となっている。維管束植物(維管束を持つシダ植物や種子植物)は1,712種で、在来種(ある地域に古くから存在する土着の種)840種のうち389種が固有種と、固有種率は46.3%に及ぶ。非維管束植物のコケ類は754種中86種が固有種だ。ただ、維管束植物の過半数が帰化植物(野生化して定着した外来植物)で、固有種の半数の種が絶滅を危惧されており、きわめて重大な問題となっている。

哺乳動物の在来種はほとんど存在せず、一度絶滅して再導入されたモーリシャスオオコウモリや、食料として人間によって導入されたと見られるマダガスカルハリネズミなどに限られている。脊椎動物は鳥類を除いて全体的に少なく、21種の淡水魚類と爬虫類はすべて固有種だ。鳥類は78種が生息しており、固有種は7種に留まっている。ただ、17世紀に人間が定住をはじめてから鳥類の20種以上が絶滅していると見られ、その最大要因が人間が持ち込んだネコとネズミとされる。また、昆虫のうち甲虫類の40%、節足動物のうちクモの25%が固有種で、淡水の甲殻類・軟体動物についてはすべてが固有種だ。

■構成資産

○レユニオン島の峻峰群・圏谷群及び岩壁群

■顕著な普遍的価値

本遺産は登録基準(viii)「地球史的に重要な地質や地形」、(ix)「生態学的・生物学的に重要な生態系」でも推薦されていた。しかしIUCN(国際自然保護連合)は(viii)に関して、対照的なふたつの火山地形が含まれた土地で侵食プロセスを示しているという主張に対し、他の世界遺産の火山地形と比較して規模が小さく、地球規模の希少性があるわけでもないと評した。また(ix)に関して、外来種の広がりと絶滅した種の数は無視できないレベルであり、この基準が適用された世界遺産の島はいずれもより完全でより広範に保護されており、この基準の価値がより明確に示されているのに対し、国際的に重要ではあるが顕著な普遍的価値を構成するほどのものではないとした。

○登録基準(vii)=類まれな自然美

火山活動や地殻変動に伴う地滑り・豪雨・河川侵食の組み合わせによって、長らく活動停止中のピトン・デ・ネージュと活発に活動しているピトン・ド・ラ・フルネーズの2峰の火山を中心に際立った美しさを有する峻険で劇的な景観が形成された。他に主要な地形として、さまざまな地質年代と特徴を有する急峻な岩壁=ランパールや、巨大な自然のアンフィテアトルム(円形闘技場)といわれ雄々しく高く駆け上がる圏谷=カールなどがある。また、部分的に森林に覆われた深い峡谷や断崖があり、温帯雨林・雲霧林・ヒースによる生態系と景観のモザイク構造が際立った視覚的魅力を生み出している。

○登録基準(x)=生物多様性に富み絶滅危惧種を有する地域

資産は植物の多様性において世界有数で、多数の固有種を育んでいる。希少な森林タイプを含んでおり、陸生生物の生物多様性を保全するためにマスカリン諸島でもっとも重要な自然生息地である。マスカリン諸島の環境に対する大規模で部分的に不可逆的な人間の所業を考えると、資産は多数の固有種・絶滅危惧種・準絶滅危惧種が存続するための最後の生息地であるといえる。

■完全性

レユニオン国立公園は森林と自然を守るための早くからの努力の結果として2007年に設立された。資産と国立公園の範囲は一致しており、資産の保護を確保するための適切な法的枠組みが運用されている。資産の範囲は際立った特徴を見せる自然景観と、生物多様性の中心的な価値を構成するレユニオンに残された自然の、あるいは自然に近い生態系のほぼ全域を含んでいる。

資産の完全性はさまざまな脅威にさらされている。実行中の管理努力にもかかわらず、侵略的外来種は資産の生物多様性の価値に対する非常に現実的な脅威であり、恒久的な管理課題となっている。マスカリン諸島のレユニオン島と他の島々で過去に多くの在来種が失われた事実がこの脅威の深刻さを裏付けている。

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