ガラホナイ国立公園

Garajonay National Park

  • スペイン
  • 登録年:1986年
  • 登録基準:自然遺産(vii)(ix)
  • 資産面積:3,984ha
  • バッファー・ゾーン:4,160ha
  • IUCN保護地域:II=国立公園
世界遺産「ガラホナイ国立公園」、アガンドの岩とその周辺
世界遺産「ガラホナイ国立公園」、アガンドの岩とその周辺
世界遺産「ガラホナイ国立公園」、ガラホナイ国立公園のラウリシルヴァ
世界遺産「ガラホナイ国立公園」、ガラホナイ国立公園のラウリシルヴァ
世界遺産「ガラホナイ国立公園」、着生植物が繁茂したゲッケイジュのラウリシルヴァ
世界遺産「ガラホナイ国立公園」、着生植物が繁茂したゲッケイジュのラウリシルヴァ

■世界遺産概要

北アフリカ沿岸部の大西洋上に浮かぶカナリア諸島ゴメラ島の北部一帯の山地および高原地帯を登録した世界遺産。ゲッケイジュ(月桂樹)を中心としたラウリシルヴァ(亜熱帯性常緑広葉樹林)は新生代新第三紀(2,300万~260万年前)の生き残りとされ、雲や霧に覆われた神秘的な森林には多数の固有種を有するユニークな生態系が展開している。

○資産の歴史と内容

「ガラホナイ」の名称はゴメラ島北部の都市アグロの王女ガラと、隣のテネリフェ島西部の都市アデヘの王子ホナイの伝説に由来する。祭典で知り合ったふたりはすぐに恋に落ちて婚約するが、テネリフェ島のテイデ山(世界遺産)が噴火し、これを凶兆と見た両家によって婚約は解消されてしまう。ホナイは海を泳いでゴメラ島に渡るとガラと落ち合い、ガラホナイの山地に逃げ込んだ。まもなく捜索がはじまると、ふたりは抱き合ったままゲッケイジュで作った槍で自害したという。

ゴメラ島はカナリア諸島の主要7島のひとつで、島の形成は1,200万年前の火山活動による。直径約22kmの円形で、小さいながら最高峰のガラホナイ峰は標高1,492mまで立ち上がり、激しい噴火によってできたクレーターが風雨の侵食を受けてダイナミックな岩場を形成し、アガンドの岩やサルシータの岩、オヒーラの岩といった特徴的な岩場が見られる。

島の周辺を寒流であるカナリア海流が流れており、気候は緯度の割に寒冷で、標高の低い島の南部は乾燥していて降水量も少ない。しかし、島の北部は標高が高いため貿易風(1年を通して同じ方向から吹き付ける恒常風)を妨げて雲を発生させ、多くの雨が降り、深い森が展開している。年間を通して大きな変化のない海流と風に加え、この森が気温や湿度を保っており、気候は1年を通して安定している。こうした要因に加え、カナリア諸島の他の島々と異なり200万年にわたって噴火が起きていないため、新生代新第三紀の生態系が守られている。

世界遺産の資産は中央~北~北西のクレーターを中心とした標高約600〜1,492mの山地と高原で、島の約11%を占めるガラホナイ国立公園がそのまま登録されている。国立公園を特徴付けているのは70%を占める「ラウリシルヴァ」と呼ばれる亜熱帯性の常緑広葉樹林で、樹種の多くがゲッケイジュだ。ノヴォカナリエンシスを中心に複数のゲッケイジュのほか、オコテアやアポロニアス、アボカド、モチノキ、リョウブ、ヴィバーナム・ティヌスといった樹種が見られ、ラウリシルヴァでも湿度が高い北部と比較的乾燥した南部の森では植物相が異なっている。北部の雲霧林にはシダ類・コケ類・ツル植物といった着生植物が絡み付いており、ジャングルのような様相を呈している。こうした森林は山地に発生する雲や森が生み出す霧で覆われており、これらが気温や湿度を一定に保っている。

園内において維管束植物(維管束を持つシダ植物や種子植物)は450種が確認されており、そのうち34種は島、8種は国立公園の固有種で、他にカナリア諸島やマカロネシア(北アフリカ沿岸の大西洋島嶼部)の固有種も少なくない。こうした植生は南ヨーロッパの新第三紀の原生林と類似しているとされ、氷河時代にヨーロッパから消え去ったが、この地では500万~200万年前の生態系が保たれていると考えられている(年代については諸説あり)。また、地層には状態のよい化石林が残されており、氷河時代以前から続く森の生態系の変遷を確認することができる。

動物相も特有で、森林に生息する数百種の無脊椎動物の40〜60%が固有種と見られ、鳥類についてはゲッケイジュバトとボーレバトがカナリア諸島の固有種となっている。また、約20種の絶滅危惧種がおり、11種については回復計画が策定されている。

■構成資産

○ガラホナイ国立公園

■顕著な普遍的価値

○登録基準(vii)=類まれな自然美

ガラホナイ国立公園には、際立って保存状態のよいラウリシルヴァが広がっており、今日ではマカロネシアでしか見られないゲッケイジュの照葉樹林に代表される卓越した生態系を有している。この遺産の生態系は新第三紀にヨーロッパと北アフリカの多くを占めていた太古の熱帯雨林と温帯林の名残であり、豊富な泉と小川が育む豊かな植生を特徴とし、多数の固有種が含まれている。このような森林がこの緯度とサハラ砂漠に近い海岸にいまだ存在していることは驚くべきことである。

○登録基準(ix)=生態学的・生物学的に重要な生態系

カナリア諸島は動物や植物の多彩な残存種や固有種で知られるが、ゴメラ島は特にユニークな進化史を示している。維管束植物は34種がゴメラ島、8種がガラホナイ国立公園の固有種で、鳥類はゲッケイジュの森に生息するハトの2種、無脊椎動物については推定で40〜60%が固有種と見られる。

■完全性

15世紀にヨーロッパ人がゴメラ島に入植した後、森林に大きな変化が生じ、わずか100年余りの間に約65%に縮小した。国立公園の南部と西部では森林伐採や焼き畑・放牧が行われ、一部ではカナリアマツとモントレーマツの植林に見られるように商業用の樹種に置き換えられた。こうした活動は排除されつつあるが、国立公園に隣接する私有地の存在が問題となっている。また、人的な活動の影響でネズミやネコ、イヌといった外来種の問題が起きており、観光客用の宿泊施設は山火事のリスクを高めている。

ガラホナイ国立公園はカナリア諸島でもっとも保存状態のよいゲッケイジュの森を有し、長い歴史を持つ森に古い樹種が生い茂り、マカロネシアでもっとも脅威にさらされた生態系が伝えられている。園内にはカナリア諸島のラウリシルヴァで見られるすべての森林タイプが存在し、着生植物が豊富な雲霧林のような珍しい森林や、ガラホナイにしか存在しない森林も存在する。

カナリア諸島のゲッケイジュの森では観光客が訪問したり採集することができない大規模な保護地域が確立されており、公園やその周辺では原生林や絶滅危惧種の回復計画も策定されている。また、2102年に「ラ・ゴメラ」の名称でUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)の生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)に登録されている。

■関連サイト

■関連記事