ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ

Villa Romana del Casale

  • イタリア
  • 登録年:1997年
  • 登録基準:文化遺産(i)(ii)(iii)
  • 資産面積:8.92ha
  • バッファー・ゾーン:10.37ha
世界遺産「ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ」、ペリスタイルの列柱とモザイク画
世界遺産「ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ」、ペリスタイルの列柱とモザイク画 (C) Jos Dielis
世界遺産「ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ」、グレートハントの廊下のモザイク画
世界遺産「ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ」、グレートハントの廊下のモザイク画
世界遺産「ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ」、十人の乙女の間のモザイク画
世界遺産「ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ」、十人の乙女の間のモザイク画、ビキニ・スタイルの女性たち

■世界遺産概要

シチリア島のヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレはローマ時代には盛んに築かれたヴィッラ(貴族が郊外の農場や避暑地に築いた別邸・別荘)のひとつで、特にモザイク画(石やガラス・貝殻・磁器・陶器などの小片を貼り合わせて描いた絵や模様)についてはローマ時代のモザイク画の最高傑作といわれる。

○資産の歴史と内容

4世紀以前、この周辺は巨大な農地で、貴族が奴隷を使って「ラティフンディウム」と呼ばれる大農場を経営していた。ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレの土地には地主の住居があったが、300年前後の地震で倒壊したようだ。4世紀はじめ、ローマ帝国の上流貴族によってヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレが建設された。持ち主は特定されていないが、一説では皇帝マクシミアヌスと息子マクセンティウスの地所で、312年前後に別の貴族に引き継がれたとされる。

上部構造は柱以外ほとんど残っていないが、パラッツオ(宮殿)といえるほど豪華なものだったようで、一時的な別荘としてではなく、周辺の農場で作物を栽培して自給しながら長期にわたって居住あるいは半居住されていたと考えられる。

ポータル(玄関)は西にあり、大理石柱の並ぶ明るい馬蹄形のアトリウム(玄関奥の開放空間)が人々を迎え入れる。その東に続くのが噴水のあるペリスタイル(列柱廊で囲まれた中庭)で、ここから四方へアクセスしていた。ペリスタイルの北西は浴場で、浴室やサウナ、ボイラー室、マッサージ室、闘技場、運動場が立ち並び、その東(ペリスタイルの北)にゲストルームが並んでいる。ペリスタイルの東にはグレートハントと呼ばれる廊下を経て大理石で彩られたバシリカ(長方形の集会所)とプライベートルーム群があり、南にはトリクリニウム(食堂)と楕円形のペリスタイルが据えられている。

特筆すべきはモザイク画で、ペリスタイルでは幾何学模様の中に動物(ネコ、ウシ、シカ、ヤギ、ヒツジ、ゾウ、ダチョウ等)の頭が描かれている。浴室には海の精ネレイスやマッサージを行う奴隷、闘技場では馬車競技の様子など建物のテーマに沿ったモザイク画も少なくない。巨大なモザイク画が見られるのが全長66m・幅5mのグレートハントの廊下で、ゾウやライオン、ヒョウといった動物を狩って船に乗せる様子が表現されている。ゲストルームなどもそれぞれテーマを持ったモザイク画で彩られており、十人の乙女の間ではビキニ・スタイルでスポーツを行う女性、リトルハントの間では猟犬やウマを連れて狩りを行う貴族たち、愛の寝室ではエロティックなカップル、トリクリニウムでは英雄ヘラクレスの功績が描かれている。

モザイク画は50以上の部屋に描かれており、日常生活や人物・動植物、ギリシア・ローマ神話に関するものが多い。一方で、5~6世紀頃からビザンツ芸術のモザイク画のメインテーマとなるキリスト教に関するモザイク画は見られない。

西ローマ帝国滅亡後、ヴィッラは城壁を厚くして要塞化され、使用されつづけた。しかし、9世紀にイスラム勢力の占領を受けて損傷し、12世紀半ばにノルマン人の征服を受けて破壊され、放棄された。

■構成資産

○ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ

■顕著な普遍的価値

○登録基準(i)=人類の創造的傑作

独創的なモザイク画群はローマ時代の最高傑作といえるもので、人類の際立った才能の証である。

○登録基準(ii)=重要な文化交流の跡

ギリシア・ローマからヘレニズム、アフリカまでモザイク画のモチーフは多様で、その技術も含めて文化の変遷の跡を示している。

○登録基準(iii)=文化・文明の稀有な証拠

ローマ時代のもっとも大きく豪華なヴィッラの1つであり、ラティフンディウムとともにローマ文明の重要な証拠となっている。

■完全性

19世紀頃から柱などは発見されていたが、現在見られるヴィッラのほとんどは1950年代に発見・発掘されたものだ。当時から法的な保護を受けており、シチリアの地方政府によって管理されている。ただ、モザイク画を保護するために建てられた鉄やガラス・コンクリート製の屋根や建物は不適切なものがあり、また以前からある排水の問題も解決しておらず、改善が望まれる。

■真正性

遺跡は発掘当時から保護されていて真正性はおおむね良好、特にモザイク画に関して干渉は最小限に抑えられている。ただ、1960年代の不適切な素材、特に鉄筋コンクリートの使用が全体の真正性に影響を与えた可能性がある。これについては修復の作業中あるいは計画中で、改善が期待される。

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