ティヴォリのエステ家別荘

Villa d'Este, Tivoli

  • イタリア
  • 登録年:2001年
  • 登録基準:文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(vi)
  • 資産面積:4.5ha
  • バッファー・ゾーン:7ha
世界遺産「ティヴォリのエステ家別荘」、オルガンの泉、ネプチューンの泉
世界遺産「ティヴォリのエステ家別荘」、上段がオルガンの泉、下段がネプチューンの泉
世界遺産「ティヴォリのエステ家別荘」、楕円の噴水
世界遺産「ティヴォリのエステ家別荘」、楕円の噴水

■世界遺産概要

エステ家がローマ郊外のティヴォリに築いたヴィッラ(別荘)で、「ヴィッラ・デステ」と呼ばれる。多彩な噴水を備えた庭園は名高く、ここで完成したイタリア式庭園(イタリア・ルネサンス庭園)は世界の庭園文化に多大な影響を与えた。

○資産の歴史と内容

1550年、教皇ユリウス3世は教皇選出に貢献したエステ家に感謝を示し、エステ家の枢機卿イッポーリト2世をローマ(世界遺産)郊外のティヴォリの知事に任命する。エステ家はフェッラーラ(世界遺産)、モデナ(世界遺産)、レッジョを治める公爵家で、芸術や科学を奨励し、ルネサンスの芸術家を庇護したことで知られる。イッポーリト2世はティヴォリに入ると再発見されたローマ皇帝ハドリアヌスの別荘ヴィッラ・アドリアーナ(世界遺産)を発掘・調査させ、これを保護した。彼は修道院跡に住んでいたが快適とはいえず、自らもヴィッラの建設を決意する。

ヴィッラ本体の設計を主導したのはエステ家の建築家アルベルト・ガルバニで、庭園の南にあるサンタ・マリア・マッジョーレ聖堂に隣接して枢機卿の邸宅を建設した。4階建てのルネサンス様式で、ポータル(玄関)や外観は控え目ながら内部はリヴィオ・アグレスティやフェデリコ・ズッカリらが手掛けたルネサンスやマニエリスムの絵画や彫刻・フレスコ画(生乾きの漆喰に顔料で描いた絵や模様)で覆われた。ヴィッラと庭園は全長200mのヴィアローンと呼ばれる大テラスで区切られており、上から庭園を一望することができる。

庭園を担当したのは建築家ピッロ・リゴーリオで、建設は土地の改良から開始された。丘を削って緩やかな斜面を造り、水道橋や地下運河を築いて豊富な水を確保した。庭園は南の上庭と北の下庭からなり、ペスキエーレ(魚の池)と呼ばれる運河で仕切られている。段差を使って水を流すテラス式で、垂直に区画された幾何学式庭園でもある。それぞれの区画にギリシア神話などのテーマを持たせ、数多くの噴水や池、洞窟、ロトンダ(円形の建物。ロタンダ)、ロッジア(柱廊装飾)などが配された。

16世紀半ばにはじまった建設はイッポーリト2世が亡くなる1572年になっても終わらず、一時はエステ家の手を離れ、建設は中断された。しかし17世紀に入ってアレッサンドロ・デステやリナルド・デステが再興し、バロックの芸術家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニらの手で新しい噴水が築かれた。17世紀後半以降はふたたび荒廃して19世紀にはエステ家の手を離れるが、19世紀後半に修復を受けて復活した。フランツ・リストがピアノ曲集「巡礼の年、第3年」の「エステ荘の噴水」を作曲したのもこの頃だ。

特筆すべき噴水はまずオルガンの噴水で、水と空気の流れをコントロールすることでパイプオルガン(オルゴール)を自動演奏させることに成功した。噴水を取り囲むカステラム・アクア(水の城)はバロック様式のロッジアで、オルフェウスやアポロといった神々の像やカリアティード(女性像柱)で飾られている。その真下がネプチューンの噴水で、両者はベルニーニが設計したカスケード(階段状の連滝)で結ばれている。高く吹き上げる大噴水は1930年代に取り付られたものだ。

楕円の噴水はカーテンのように広がる滝の優美な姿から「噴水の女王」の異名を持ち、周囲はぐるりとヴィーナスの洞窟に囲まれている。ダイナミックなのはドラゴンの噴水で、4頭のドラゴンが口から水を噴出し、中央から巨大な水柱が立ち上がっている。百噴水は上庭を横断する3つの運河に面して300もの噴出口を持ち、口から水を噴出させる仮面の列は強い印象を残す。フクロウの噴水にも自動演奏装置が設置されており、鳥とフクロウが交互に歌う仕掛けになっている。

こうした段差を利用した多彩な噴水を持つ幾何学式庭園はイタリア式庭園と呼ばれ、ヴェルサイユ宮殿(世界遺産)に代表されるフランス式庭園(フランス・バロック庭園)をはじめ以後の庭園文化の規範となった。

■構成資産

○ティヴォリのエステ家別荘

■顕著な普遍的価値

○登録基準(i)=人類の創造的傑作

ヴィッラ・デステはルネサンス文化の絶頂を示すもっとも際立った傑作のひとつである。

○登録基準(ii)=重要な文化交流の跡

ヴィッラ・デステの庭園はヨーロッパ全域の庭園デザインの発展に大きな影響を与えた。

○登録基準(iii)=文化・文明の稀有な証拠

ヴィッラ・デステの庭園はルネサンスのデザインと美学の本質を示す卓越した例である。

○登録基準(iv)=人類史的に重要な建造物や景観

ヴィッラ・デステの庭園はルネサンス期に築かれた驚異的な庭園の中でも最古で最高の作品であり、ルネサンス文化の開花を象徴している。

○登録基準(vi)=価値ある出来事や伝統関連の遺産

ヴィッラ・デステの邸宅と庭園はイタリア・ルネサンスの傑出した証拠であり、以後の創造における芸術的なインスピレーションの源泉となっている。

■完全性

資産には顕著な普遍的価値を構成するすべての重要な要素が含まれており、その重要性を保つために十分なサイズを持つ。何世紀にもわたる介入にもかかわらずヴィッラと庭園、あるいは建造物群と景観の空間的関係や構造について完全性を維持している。ヴィッラと水の間の関係、ティブルティーナの領域に適応した特殊な形状などの要素は変わらず維持されている。

■真正性

宮殿と庭園の両面について真正性のレベルは非常に高く、建造物群のさまざまな時代をハッキリと認識することができる。ローマ時代のヴィッラの跡や邸宅が築かれている修道院跡もいまだ視認でき、庭園の空間的・装飾的な構造の大部分は保存されている。フレスコ画をはじめとする壁画やベルニーニのカスケードといったバロック作品も厳格に修復され、よく保全されている。装飾や仕上げ材・配水システムの急速な劣化を受けて実施された近年のいくつかの修復キャンペーンはヴェネツィア憲章(建設当時の形状・デザイン・工法・素材の尊重等、建造物や遺跡の保存・修復の方針を示した憲章)の基準に準拠して適切に行われている。

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